あなたは「ヴィンテージラグ」と聞いてどの様なラグをイメージされますか?
・古いラグ?
・年代物のラグ?
・希少性の高いラグ?
・経年変化してパイル(毛足)が擦れた様なラグ?
それでは、ヴィンテージラグは オールド、ユーズド、アンティーク、デッドストック、中古 とは違うものでしょうか?
この辺りについては日頃意識しない限り、なかなかその違いを説明するのは難しいのではないでしょうか。
この記事では、そんな区別の難しいヴィンテージラグとオールドラグ、ユーズド、アンティークの違いを分かりやすく理解していただける様、シンプルな図と共に解説をいたします。
てってり早く結論をお知りになられたい方の為に、早速全体像の図をご覧いただきましょう。
こちらの記事は以下のYouTube動画でもご覧いただけます。お好きな方でご覧(お読み)ください。
それでは、以下より順を追って解説いたします。
【図の見方】
・右端からスタートし、左方向へは時間経過を表します。縦軸は数量です。
・使用年数を経るごとに呼称がどの様に変化していくかを追っていきますので、
黄色の箇所をご確認ください。
(1).使用年数0年⇒ 一般呼称: 新品
完成したタイミングが“新品であること”については、万国共通でしょうから次に進みます。
※ただし、日本では新品というと“白衣にマスクを付けた作業員が工場で袋詰めしていて衛生面でも安心安全”のイメージを持つ人が多いと感じます。
そういった観点から鑑みた場合、イランの手織り絨毯(織り子さんが裸足で乗り織り作業をし、イランの絨毯商が土足で踏む)が果たして“日本人の多くが持つイメージの新品に合致するかどうか”は、十分考える余地がありそうです。
(2).使用開始時点から⇒ 一般呼称: USED
(3).購入後、未使用⇒一般呼称:未使用
(4).使用開始後20年辺りから ⇒ 一般呼称:オールド
この辺りから少し入り組んできます。
使用開始して間もないラグはオールドに該当しませんが、20年ほど経過すると使用未使用問わず、
オールドという呼ばれ方に変わってきます。
上図の黄色箇所であれば、
・オールドでUSED
・オールドで未使用
という様な分類となります。
また、ラグの一種であるオールドギャッベもこのオールドに属します。
織られてから20~30年以上のギャッベは、オールドギャッベと呼ばれます。
現在の織りの細かなモダンギャッベとは異なり、素朴なデザインで織りが粗いことが特徴として挙げられます。
(5).オールドだが未使用 ⇒一般呼称:デッドストック
絨毯やギャッベにおいて、デッドストックという単語が使われているケースはあまり見聞きしませんが、服や雑貨等の一般的な解釈に当てはめて考えると、デッドストックという表現も可能でしょう。
それにしても、20年以上も未使用のラグ・・
女性が嫁入り道具として持参した自作の絨毯なのか、それともお店が仕入れたけども嫁ぎ先が無くずっと在庫として店にあるものなのか。
パッと耳に入り込んでくる横文字の“デッドストック”というお洒落そうな雰囲気に惑わされることなく、そのラグとじっくり対話し見定めたいものです。(言葉自体は dead =死んだ stock = 在庫 ですから。)
(6). 使用開始から20年~100年未満&USED &価値が高い ⇒一般呼称:ヴィンテージラグ
遂に登場しました、ヴィンテージラグ。
ヴィンテージラグ解説の前に、もう一つのカテゴリまで確認しておきましょう。
(7).使用開始から20年~100年未満&USED 、しかし価値は高くない⇒一般呼称:単に古いUSED(中古)
上の2枚の図のように、オールド且つUSEDのラグでも価値が高ければヴィンテージとして取り扱われ、そうでないものは中古”単に古いラグ”扱い。
それでは、価値の有る無しには何か明確な基準の様なものが存在するのでしょうか?
結論を先に申し上げると、明確な基準や定義は存在しません。
その為、ヴィンテージと呼ぶかはあくまでも売り手側の裁量によるところが大きいのです。
そもそもヴィンテージ=vintage は、vine(ぶどう) + age(年)を組み合わせて出来た単語と言われており、
“ワインに使われるぶどうの 当たり年”を示す言葉として使われていました。
特に当たり年に収穫されたぶどうを原料とし、さらにしっかり熟成したワインにはとても美味しいものが多かったことから、 “ヴィンテージは古くて良いもの”という認識が広まっていった様です。
現在では洋服や車、楽器や雑貨やアクセサリーに至る幅広いジャンルにおいてヴィンテージという言葉が用いられる様になりました。
そして、嗜好品のひとつである絨毯やラグにもヴィンテージというカテゴリーが生まれたのです。
また、絨毯の本場イランではヴィンテージラグはどの様なモノのことを指すのでしょうか?
私がギャッベやラグを仕入れている“お馴染み”アリさんに聞いてみました。
”ヴィンテージラグとはパイル(毛足)が擦り減って薄くなっている(もしくは完全になくなっている)絨毯”をイランの方々は一般にはイメージするようです。
(イランの公用語であるペルシャ語ではヴィンテージのことを、”ゾルラティذرتی” とか ”サービーデسابیده ”という呼び方をするそうです。)
そして、イランでも高価で取引されるヴィンテージラグ、絨毯商の中にはヴィンテージ風をつくり出す目的で、意図的に絨毯の毛足をシャーリング(特殊な毛足をカットする機材)する人もいるということは想像に難くありませんよね。
(8).使用年数100年辺りでUSED ⇒一般呼称:アンティークラグ
USEDで●●なラグも100年を超える辺りから“アンティーク”という呼ばれ方をします。
上の図では100年超の中古(単に古い)とデッドストックはアンティークに分類しておりませんが、それだけ長い期間形をキープし続け、未だに販売可能であるならば、もはやアンティークに分類されても良さそうですね。
また、利用開始から50年程度超えるモノについては、セミアンティークという呼ばれ方もある様です。
以上、ヴィンテージラグとは?についての図を用いた解説でした。