イランの北西から南東に伸びる、ザグロス山脈のコフマルという地域の山岳地帯を車で走ること約一時間。
我々はついに遊牧民のキャンプ地であろう場所にたどり着いた。
たむろしますは、ヒツジたち。
奥に見えますは、遊牧民の皆様のテント。
左奥に座します黒いテントに、首領(ドン)が住むとのこと。
ここは我々の目的地ではなかったが、前々から見てみたかった光景が、目の前に突如現出したことで、一気にわたしの Vol-tage も上がった。
「さ~わ~ぎ~始~める~、このheart beat♪ by your self♪」by 某サッカー大会テーマソング
観光客の姿は無く、男の子がひとり羊の世話をしている位だったので、恐らくは日常的にこういった生活を営んでいるのだろう。
そして車はさら奥へ。
ガイドのサラールから、
「今日はカシュガイ族の結婚式があるので、参加させてもらえるよ。どうする?」と聞かれたので無論、返事はyes。
急きょ、カシュガイ族の結婚式に参加させて貰うことになった‼
カシュガイ族の結婚式は春と夏に多いらしく、月に数回の結婚式に運よく巡り会うことが出来た。
結婚式は、村の広場で行われていた。
近隣の住民や親族らが続々と集結する。
サラールの親戚らも多数いるようで、各人と挨拶をしながらメイン会場へ。
曲と曲との間に、日本から来たということで自己紹介をさせられる流れとなり、日本人が珍しいらしく(!?)、わたしの周りに多くの人だかりが出来た。(こんなに多くの人達から好意的に囲まれることなんて、人生で何度あるだろうか?)
皆、好意的な眼差しを向けてくれるので私もすこぶる上機嫌。
女性達のダンスが一段落すると、いよいよ新郎新婦がゴージャスに彩られた車に乗り登場。
爆竹やら雄叫びやらでカオスな状態になる。
最後に新郎新婦を交えてのダンス。
皆が輪になり、3歩進んで2歩下がるステップを踏みながら、半時計周りにまわる。
わたしも、ぎこちないながらも輪に加えて貰い、祝いの舞いを楽しんだ。
こうして、ひととおりの祝いが終わると、人々は三々五々散って行く。
この結婚式に参加し、女性達の色鮮やかな衣装は、
“カシュガイ族の伝統的な衣装であり、
何か特別な祝い事などの時に女性達は、
あの衣装を身にまとっている”
ということが確認出来た。
しかし、生活に密着したギャッベやキリムを織るシーンであの伝統衣装を着るのは、演出が過剰ではなかろうか。
ギャッベの撮影時には、女性達は気合いを入れてあの衣装で臨んでいるのだろう。
若しくは、撮影側のリクエストかもしれない。
しかし、それが逆に
「本当にあなた達がつくって(織って)いるのか?」
という疑念を生みかねない。
(実際わたしがそうだった様に。)
ヒールの高い靴で雪国では生活できないのだ。
わたしは、
純粋なモノ(ギャッベ)の価値と、イメージアップの為に付け足された演出の部分を切り分けることが重要だと考えている。
本質さえ捉えることが出来れば、現在の方法以外の魅せ方も出来るかもしれない。
と、長くなってしまったが、今回の”ギャッベの旅”でその辺りを掘り下げてみたいと改めて感じたカシュガイ族の結婚式だった。